●蛇の目傘へのこだわり−和傘を構成する細工品

パラパラと雨をはじく音, 和傘独特の油のにおいの存在感、鮮やかな模様や色彩は人目を引き、そして身につけている着物や和装には調和の色を見せます。
これは、たとえそれが高級ブランドの物であったとしてもほかのどの洋傘には見つからない魅力です。
近頃では結婚式や成人式、卒業式など和装が欠かせない場面であっても一緒に和傘を携えている姿は見かけなくなりました。この機会にいちど、和傘がお手元の洋傘と比較してどうちがうか、どちらが和装にふさわしいかをご確認ください。

 

 かっぱ

羽二重傘のかっぱ 雨が傘のてっぺんからしみ込まないようにするために頭ろくろにかぶせられている小さな布、これがかっぱです。
傘のてっぺんは開閉の時に一番動く部分の一つ。紙に油が塗られているとはいえ雨が一番しみこみんで破れやすい部分です。
その昔、蛇の目傘にはかっぱは付いていませんでした。初めから雨具として使用されていた番傘とは違い、昔の蛇の目傘は日傘・雨傘兼用的な使われ方をされてきたのです。にわか雨が来たとき等にこの雨が柄を伝って落ちてこないように手持ちの端切れや紙切れなどをくくりつけてしのいだ様です。
現代の蛇の目傘では標準装備ですが、羽二重では特にかっぱに高級品に印しがされています。

 はじき

開いた傘が閉じないように留めるのがはじき。柄(え)の中程に付いている木製や金属製の留め具です。
蛇の目のはじきは洋傘のそれとは違い上と下の二丁(二つ)付けられています。
雨の強さや風の強さで開き具合を調節するために二つ付けられています。
また、お手入れの時には手元から数えて一丁目のはじきを使用します。

 つなぎ−骨の組み合わせ

傘の骨組みは、竹や木を切ったり割ったり削ったりした物を糸で繋いで構成されています。
糸も一種類ではありません。
繋ぎの糸は、頭ろくろ、手元ろくろ、親骨と小骨の繋ぎ部分(中糸と呼ばれます)、軒で使用されています。

 繰り込み(くりこみ)

傘の柄(え)にろくろが取り付けられている状態の物です。
この段階ではまだ殆ど部品が付けられていません。

 つなぎ−ろくろと親骨小骨

手元ろくろ 写真
ろくろは44本以上ある骨をひとまとめにしたり、傘を開閉するのにとても重要な部品で、傘の上部と柄の途中の2カ所に取りつけられています。
傘の頭の部分にあるのが頭ろくろ、手元にあるのが手元ろくろと呼ばれます(そのまんまですが^^;)。
頭ろくろは蛇の目傘では普段かっぱに隠れて見ることが出来ませんが、親骨を束ねる役目を担っています。手元ろくろは柄(え)を上下する筒状の部品で小骨を束ねる役目を担っています。
ろくろは小さな穴があいた溝が、骨の数だけ切られている筒状の部品。たとえば骨数44本の傘の場合には44なら44の溝、骨数が48本の傘なら48の溝が切られています。この溝に骨を挟み糸を通して繋ぐのです。
よく見てください。ろくろに切られている溝はとても薄く、完成した傘を見ても骨が埋まって溝だと確認することも難しいほどです。
この細い溝に挟んだ板(骨)に糸を通すにはどの様な方法を使うのでしょう。
特殊な針でも使用するのかと思いきや、驚いたことに、ごく普通の木綿糸を使って糸を通しているのです。
もちろん、針をまっすぐ通したのでは隣の壁に当たって針が通りません。実は一つ一つの穴は一定の角度を持って開けられているのです。
先人の知恵とは素晴らしい物ですね。
親骨と小骨の繋ぎ
和傘を構成する骨は、紙を支える親骨と、手元ろくろからのびる小骨からなっています。
薄い小骨は更に半分に割って親骨を挟み、小骨と親骨を繋ぐのには糸が使用されています。
洋傘が骨1本1本に金属製のピンを取りつけて繋ぐのに対し、和傘の場合には小さくあけられた穴に糸を通して留められています。
なぜ糸を使用するのでしょうか。竹の骨に金属のピンは固すぎるのです。当時の加工技術・・・と言う問題よりも柔には柔を という日本人の持つ感性が、傘の寿命を延ばす効果を生みだしています。
 和 紙
蛇の目傘に張られている紙には美濃和紙が使用されています。
一口に和紙といっても、そのすき方や厚さなどで様々な種類があります。
傘に使用される紙は、何度も開いたり畳んだりされるため、薄く、丈夫なものが必要です。
無地紙蛇の目では機械漉き、羽二重傘では手漉きの和紙が使われていますが、
どちらも和傘のために特別に作られた紙を使用しています。
 張 り
和傘を造っている風景を想像して下さい と云われたときに 多くの人がまず頭に浮かべる風景は紙を貼っているところなのではないでしょうか。
時代劇で浪人が内職に傘の骨に刷毛で糊を塗り紙を貼り付けている様子、(最近は時代劇でもそんな様子は見なくなったようですが)
これですね。
紙は、ただ骨に糊を塗って張り付けるだけではありません。
糊は薄く均等にぬり、、乾かぬ内に張り付けないとめくれてしまいます。
多く塗りすぎるとはみ出た部分の紙が堅くなりきれいに畳めません。

 かがり−内にさりげない飾りの糸

かすみかがり
傘の小骨とろくろの周りには糸が張られています。
さした傘を下から見上げたときに見られるこの飾り糸はかがりと呼ばれ、蛇の目傘の特徴の一つとなっています。
番傘に比べて着物を着た女性が使用する事が多いため、飾りのために装飾を施すのです。
かがりにもいくつかのスタイルがありますが、左の写真、このスタイルのかがりは、かすみかききょうかがりがりという形で、殆どの蛇の目傘ではこのかがりを用いられます。使用される糸の長さは10メートル以上ともいわれますが、これを一本の糸でかがるのは熟練者にとっても至難の技です。

さらに華やかに仕上げるのはかすみの上に色の違う糸を張る桔梗かがり。特別な和傘か高級な和傘のみに用いられる物で、近年では羽二重でもあまり使われることはありません。当店の場合には京友禅で用いられております。
(友禅傘は現在製造未定です)


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中張り蛇の目傘
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手漉き新色 
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